TRPGのもつ「行動の柔軟性」への対応

http://d.hatena.ne.jp/koutyalemon/20070114/p1
Aの魔法陣について。行動の柔軟性を重視したシステムだという見かたですね。
どうも他のいろいろなサイトやブログでの感想は「よりゲーム的になった」とか「簡素になった」とか、旧来のシステムから差し引き部分を書いていることが多いです。
じゃあ、それでつまらなくなったか、というとそうではなく、今までのシステムではできなかったことが出来るようになったといえます。「行動の柔軟性」が高いという点が、その『できるようになったこと』です。
 
追記:
この記事では、TRPGのもつ行動の柔軟性について、Aの魔法陣を引き合いに出して、書きました。

 
TRPG的、行動の柔軟性』というものは、
「A.ひとつのものを多様に使い道を思いつけること」がまずそうでしょう。紅茶さんのとこでも書かれてますが、制限された条件下でも発想力があればたいした制限でもない、ということでしょう。


また、
「B.ある目的に対して、多様な手段を選択できる」というのもそうでしょう。勝負や正解を求めるタイプの「ゲームゲームしたゲーム」では、リスクを最小限にして勝利条件を満たすことが良しとされます。しかし、TRPGでは、よりドラマ的な「感情や性格」の理由で、「最適解ではないが、個性的な行動」を選択できます。(生命が脅かされるリスクをさけるのは当然として。PCは"ややお人好し"な行動をすることが多い。)


A.は、ジョジョのような「発想力が決め手」のバトル漫画の流行が影響しているようにも思えます。
ジョジョが起源ともいえないかもしれませんが、代表的な漫画としてジョジョを挙げておきます。他にも「植木の法則」「金色のガッシュ!!」「ワンピース」などなど。旧来の「力と技のぶつかり合い」という戦闘から、「知略、だましあい」というものが増えてきているのです。
こういった戦闘を再現するのに、以前のシステムのように「ルールで決められたことをもとに行動選択する」のでは対応できないのです。(やろうとするなら、まず「知力度で『そのアイデアを思いついたか』の判定を行い、器用度で『そのように道具を扱うことができたか』の判定がされるでしょう。
単純に『剣をふる』行動よりもペナルティを受けて成功率が落ちるのが目に見えています。)Aの魔法陣は、その「柔軟性」を受け入れるようになっています。


B.は、ドラマ寄りなシナリオが求められるようになったせいでしょう。リプレイの影響、漫画やアニメファンが中心となっている現状のユーザー層、というのが理由かもしれません。
FEAR系と呼ばれるシステムは、「シミュレーション」的な『自然法則の再現』に少し目をつぶることでそうした「ドラマ寄り」なシナリオを可能にしています。しかしこれは以前より「マスター裁量」ということで逃げてきた部分もあるので、ユーザーに適切・確実ではないでしょう。(FEAR系でも、厳しいマスターがやればドラマチックにならずに「平凡なキャラクター」が「努力してなんとか事件解決しました」となってしまいます。)
Aの魔法陣は、「自然法則的なルール」をもっていません。参加者が「ありえねぇ」と言わない限り、超能力でも魔法でも宇宙人でもモビルスーツでも32次元人でもなんでもかんでも扱えてしまいます。(アルファ的世界が背景世界であるかのようですが、それでさえも「多元世界」であるために、様々な理由を付けることができます)行動にも、そうした世界による制限を受けません。(一応、マスターが世界を固定することはできます。しかし、固定するとマスター側もアドリブがしにくくなります。)

追記:
Aの魔法陣では、さらに、「その場に何があるか」「どんな能力があるか」、さえも柔軟に「存在する理由があれば、OK」となっています。また、解決すべき問題そのものについても手を加えることができます。
例えるなら、マジックザギャザリング等のデッキ構築カードゲームの逆、その場でデッキが逐次追加・変更されるという感じです。敵の残ライフは3点。ライトニングボルトで勝ち、でもいいですがそれよりも、複数枚のカードを使って3点ダメージをたたき出す方が面白い、なおかつ敵もカウンターを何度か使ってきて、その後にこちらのトドメのカードで逆転というシーンの方が良い、というところでしょうか。
ここまでいくと、「行動選択」とはだいぶ離れたゲーム手順なので、今回は割愛します。

 
私が思うに、TRPG黎明期に「シミュレーションの変形のゲーム」を作ったときに気付いた「ゲームの新しい楽しみ」のうちの一つなのではないか、と思います。スポーツ的に楽しむD&Dは、100回、1000回と遊ぶうちに数回は「指輪物語みたいな、ドラマチックな展開」に遭遇できるでしょう。
しかし、もっと「創作的な楽しみ」を重視した『Aの魔法陣』であれば、「○○みたいなドラマチックな展開」がいつも起こせるわけです。
今後は、「自然法則を緻密に再現するルール」よりも、「ストーリー展開を構築している法則」を重視したシステムが増えるでしょう。そのためにはもっとストーリーについての研究が必要かもしれません。
そして、その分析から得た「ストーリー構成指南」のような記事がユーザーに浸透しないと、「難しすぎる」と言われてしまうでしょう。「破壊的イノベーション」の失敗の方ににならないように。