RGN #4 感想と考察

4回目の今回は、3人の発表者の方がそれぞれゲームシナリオのプロとして活躍されており、シナリオ講座のような本も出されている方々です。前回までの発表者の方も、かなり業界関係者や出版・発表の経験のある方でしたが、名前は通っていない、いわば私たちと同様に素人レベルでできる話が中心でした。
今回は、プロがプロとして話され、それぞれのお仕事に関わることを中心に発表されました。
 
まず、前田さんから。
発表内容:
・ゲームのシナリオは、『プレイヤーと主人公の「視点の共感」「セリフの共感」「行動の共感」』という3つの共感が必要だ。
・プレイヤーとキャラクターの行動原理を一致させれば共感しやすくなる。
・プレイヤーとキャラクターの「知識」の差
 プレイヤーは多くのゲームをしていくと同系統のゲームから得る知識・経験が活かされる。しかしキャラクターはその世界で初めて体験する出来事である、という違いが起きてしまう。
 逆にキャラクターにとってはその世界で生活してきたので常識的なことでも、プレイヤーには初めての世界なので知らないことばかり、という違いが起きてしまう。
 その知識の違い、ズレを修復するために、チュートリアル的なシーンを最初に用意し、段階的に応用など高度なことをできるようにしていくという手法がある。(任天堂のお得意の手法。ゼルダやマリオなど。カードヒーロー(GB)もそういったシナリオになっていた)
 
感想と考察:
ゲームのシナリオについての重要点のお話でした。つまるところ、「ゲームのシナリオって、こういうこと考えて作ってるんですよ」ということですね。
ゲーム研究会としては基本中の基本というところで、論点もなく、反論も出ないでしょう。
もっと、開発の現場としての問題、ゲームでのシナリオってこんな苦労があるものです、というような話題が広がるようなところを聞きたかったと思いました。
 
 
お次は川邊先生。
発表内容:
以下抜粋です。後にこの発表とほぼ同様の内容で本を出されるとのこと、詳細はそちらにまかせて、(なにしろ膨大な量の90分のお話だったので)、抜粋で記述します。
・ゲームとは何か・・・ゲームとは、古代のサバイバル(生き残り)闘争の「演技」である。
 生き延びることは、人間最大の善である。文明発達とともに戦争は行われなくなり、より安全で有用な商取引による協力が行われるようになった。それでもある条件下では殺しが認められる場合がある。
・ゲームの種類・・・ゲームのいくつかのタイトルを挙げて、ジャンルごとに例を出していました。
・ゲームの起源・・・スポーツを含めた広義のゲームについて。スポーツの中でもオリンピック競技は特に戦争に関する技能を競うものが多い。スポーツでないゲームでも、得点を競うものは「生き残りのための」闘争の模擬である。
・戦争の殺しは善・・・戦争という手段により、生存に必要なものを獲得する。社会の生産力が向上すると、戦争するより取引したほうが有利、となってきた。戦争は禁じられたが、代理戦争としてゲームが行われる。
代理戦争は、架空の闘争である。しかし、勝てば歓喜し、負ければ落胆する。模擬闘争でありながら心理と感情は本当の戦争そのもの。これがゲーム。
・闘争以外のゲーム・・・スポーツやアクション、戦略シミュレーション等は闘争の、生き残りのゲーム。しかし、アドベンチャーRPG、などは物語の面白さを楽しむゲーム。
・ゲームとドラマ(物語)の違い・・・ドラマには倫理(善悪)の主張があるが、ゲームにはない。
・ゲームが独自にもつテーマ・・・生きよ!という呼びかけ。
・許されないこと・・・生き残りのための殺しでなく、無差別殺人は害悪。人類全体の生き残りの希望を踏みにじる行為。
・ゲームを発想する・・・生き残りの舞台設定。敵の設定。勝負の方法の設定。これらを揃えた時にゲームが発生する。
・ドラマの主張・・・作家はテーマについて、あれこれ説明・説得をしない。主人公を描き、黙って語る。
・ドラマの分析・・・男性型は正義や権力、覇権を追求。女性型は愛。
アドベンチャーゲームの選択肢・・・選択肢の構造は作家の文体のようなもの。
・ゲームの描くif・・・選択肢による分岐、その先の別の物語の興味、それが「ゲームドラマ」のゲームの未来だろう。
・物語の創作・・・物語はある程度の仕組みを見出せる。しかし、それをコンピュータ化は不可能。コンピュータは支援ツールにできる。
 
感想と考察:
テーマとしては「ゲームとは、生き延びること」「ゲームの発想と手法」「ドラマのあるゲームとドラマの仕組み」という3つだと言えます。一つ目、「ゲームとは生き延びること」これは、目からうろこという感じの意外な結論です。RGN第1回と第2回の回答にもなります。死にたくない、だから生きる。そういう原始的本能とかがさせるのでしょう。
二つ目は、ゲーム開発の手法に関するもので、その中でもゲームの特異性がわかるというものです。一部は先の前田さんの発表と重なるものでした。
三つ目は、ドラマを分析するという点で普遍的なもの、ごく一般的なものを題材に分析したようです。ゲームに限らず、現在は多様な流れをもつ物語があり、この分析に当てはまらないものも少なくないです。ドラゴンボールは当てはまりますが、ワンピースには当てはまらないです。ジョジョも当てはまらないですね。
 
そして佐々木さんの発表です。
発表内容:
演技。ゲームと演技。ゲームのようなもの、演技のようなもの。ゲームと演技を組合わせられるか。
 
感想と考察:
あまりに唐突でした。仕掛けも面白いし、テーマについても「観る」のに精一杯でした。
 
3人の発表は、どうもRGNのテーマとは違う部分についての発表だったと思います。開発に携わる人にとっては、参考になる部分も多かったかでしょう。
しかし、ゲーム独自の物語についてや、ゲーム上での特異性はあまり論じられていない、議論より観客として参加したような感じです。
豪華ゲストの話を聞く会ではなく、やはり研究する会らしい方向で次回は進められると期待しています。