アイマス2 「9.18事件」を分析してみる

期待されたアイマス2ですが、悲惨な事態を招いたのはご存知でしょう。。
通称「9.18事件」、東京ゲームショウでの発表が招いた騒動。
あちこちでこの件について書かれていますが、ゲーム内容が悪いということを中心に書かれていることが多いようです。
しかし、私はゲーム内容よりもバンナムの宣伝における行動のほうに問題があると考えました。
この件におけるバンナムの行動を分析してみます。


1.ゲーム内容については、発表前に決まっていたであろうに、その発表の順番や戦略の考慮が足りなかった。
2.発表に対する反響を分析しきれていない、あるいは無視した対応が続いた。
3.ニコマスについての言及をしてしまった。


この3つについて分析していきます。


1.ゲーム内容の発表について
マイナス要因のひとつ、期待をコントロールできなかったことです。
最初に、「今回使用できるキャラはこれだけです。ごめんなさい」としておけば、そのあとに出す情報も受け取り方感じ方が違ってくるでしょう。


竜宮小町がライバルとして登場について、もっと後に発表すれば感じ方は違ったかもしれません。
まず、4人がメインキャラから外れることを発表。「えー、リストラかよ」とは言われるかもしれません。しかし、その後に竜宮小町がライバルとして登場という情報を出せば、「おー、ゲームにも出ないのかと思ってた。ありがとう!」と思うかもしれません。


竜宮小町がプレイ不可に』+『ジュピター追加』という組み合わせが、問題をややこしくしています。


まず、「4人のキャラクターがプレイ不可」の理由を制作上の都合であると推測するでしょう。
それに対して追加というのは、その理由と矛盾します。
「なんだ、こんなの作る余裕あるんじゃないか」こう思うでしょうね。


普段良いことをしていて誰からも良い人と尊敬される人がちょっとした間違いでもした場合、評価がかなり落ちるということがあります。
逆に、普段人に迷惑をかけたりしていて不良と呼ばれるような人が、ちょっとした親切をしたとき、評価がとても上がることがあります。
こういった心理効果があるのです。バンナムは、そこまで考えていなかったのでしょう。
(よくわからない人は、炎の転校生9巻を読んでみるといい!うぅっ、泣ける!!)


もうひとつのマイナス要因。ゲームショウの会場で、坂上Pがぽろっとこぼしたこと。
ゲーム内容において、とても重要なものであるにも関わらず、軽く流してしまいました。
アイマス2の発表に対する批評の中でもっとも問題視されている部分ですね。
(しかも、このステージでの発表自体がフューチャー賞アンケートの後だったとか。発表後なら間違いなく受賞逃したでしょう。)
竜宮小町については、ゲームショウの前にすでに発表されていました。
とはいえ、プレイ不可ということは書かれておらず、「まだ慌てるときではない。正式に発表があるまでは。」と、望みをもっていました。
いや、望みを持つように仕向けていたのですね。
ここで発表してしまうと、フューチャー賞は取れませんから。しかし、そんな小細工をして取った賞にいかほどの価値があるのでしょう。


いずれにせよ、坂上Pの何気ない一言で済ませるものではなく、その一言はとても重かったのです。



2.反響への対処
ゲームショウでの発表後、ファンの人たちはあの発表についての続報を期待していました。ファミ通webでの情報です。
これがまた、ファンの傷口をえぐってしまったのです。
独占インタビュー! 『アイマス2』男性ライバルユニット“ジュピター”、そして“竜宮小町”の秘密を総合ディレクター石原氏に訊く! - ファミ通.com
石原Dによる説明は、後付で申し訳程度に関連させた言葉が並んでいるように感じられます。


燃える相手としてストーリー的にキャラをたてることは必要ではないのです。
ゲームに燃える人はムービーシーンをスキップして、何度も遊ぶことで厳密な数値を分析・実証し、攻略を考えるのです。
ストーリー上で燃えるのなら、ゲームでなくアニメでやればよいのです。
ゲーム上の数値やバランスでキャラをたてればよいのです。


対戦ゲームでもっとも楽しい相手は、人間である。これは、スト2が教えてくれた事実です。


アイマスがユーザー視点から変わることと、CD売り上げランキングとは別に関係がないでしょう。CDを買う人々の生活まで描かないし、そんな多くの人たちを描くことはできないものです。
CDランキングでもやはり他のユーザーとのオンラインランキング制のほうが盛り上がると思います。


本当の理由としては、「キャラクター展開をしたい」というところでしょう。クロスメディア化と言っているのがそれだと思います。
最近、ゲームだけで儲けを出すことが難しく、ゲーム関連商品で長く儲けを計算するということがあります。
特にキャラクターには無名のものを使うのが避けられ、RPGの主人公もプレイヤー自身ではなく、既存のキャラクターが据えられ、それを操ることになります。


そして、961の三人の男性キャラの存在理由もそれなのでしょう。
ライバルとしてのキャラクターならば、アイマス初代に名前だけの対戦アイドルたちがいます。これで十分なのです。ゲームとして燃えるには。
「覇王」とか「魔王」とか出てくればそれだけでどきどきするものです。


とはいえ・・・これ単体で見ればそんな問題でもないのですよね。キャラグラフィックが付いただけですし。
変な同人二次創作が出るのは勘弁してほしいけど、それは元からの問題で・・・。まあ、公式が二次創作を煽ったような、燃料投下したような形にも見えます。そういう意味では配慮がたりないですね。
公式がこれを出さなくても彼らはひどいのを(本当にもっとひどいものを)描いてます。
が、それはそれ。
クロスメディア展開用には別に世界観を用意したらよいではないでしょうか。ゲームと違うと言われるのが嫌だからゲームの方をクロスメディア用に変えたというのなら本末転倒です。



その後ろに書かれている「俺の考えたアイマス設定」の話がまた鼻につきます。「おれの考えたストーリーをお前ら楽しめ」と感じてしまうのが失敗です。TRPGでもよく嫌われるタイプにあがる「おれの設定はすごい」と延々説明する人のようです。


765プロ事務所の設定を変えて、事務所の危機というのを提示するのはよいでしょう。そこで、「お前たち、この危機をどう乗り越える?」とチャレンジ精神を刺激させるようなことを言えばよかったのです。
製作裏話としてはよいでしょうが、それはゲームが出た後で出すものです。


これらのことを踏まえ、先の記事での石原Dの説明には、ゲームの魅力が感じられません。
言い訳をするくらいなら(言い訳にしかならない言葉しか用意できないなら)そこには触れず、
もっと「ここが楽しいよ」というプラス要因を発表すべきでした。



3.二次創作との関係
さっきも触れたファミ通でのインタビュー記事内で、『ニコニコ動画でのユーザー投稿の影響が大きい』とのことを言っています。
独占インタビュー! 『アイマス2』男性ライバルユニット“ジュピター”、そして“竜宮小町”の秘密を総合ディレクター石原氏に訊く! - ファミ通.com
言葉の意味を解釈するには幅がありすぎますが、果たしてどこまでニコマスの影響を受けたのでしょうか。


二次創作というのは、流行しているものを利用して、自分の作品であるかのように発表し、
あわよくば自分の利益にしようというたくらみを含んだ活動であるのです。(全てがそう、というわけではないが、その可能性は否定できないということを理解していただく必要がある)
まあ、MADなどというのはお遊びの感がありますが。
二次創作は本家に利益還元をしないものです。いくら二次創作の同人誌が売れても、本家の権利者には1円も入ってきません。
ところが、ニコマスというのはPVMADにおいてはDLCを購入してそのアクセや衣装、新しいダンスを使用したMADをみんなで作成し、楽しむという行動がありました。
この、DLC購入ということがある程度の利益還元にはなっていたのです。
そういうことで、権利者であるところのバンナムはお目こぼしをしていたのではないかと思っていたのですが・・・。
しかし、
今はツールなどの発達もあり、本家を買わなくても二次創作を作れる環境が整いつつあります。
ノベル等の場合、キャラクターの絵をゲームからキャプチャせずとも、どこかの誰かさんがうまく描いた「捏造立ち絵」をいただけば、本家に無いようなエロいポーズや表情さえも可能です。
また、ダンスPV系においても、本家に見劣りしないほどの美麗なMMDモデルが作成されています。
さらには、ゲームに入っているポリゴンデータを表示するツールを作成している人もいるようです。ツールと一緒にデータも流通されれば、本家の価値が下がるでしょう。
そして、ニコニコ動画において人気の動画は、真面目なものよりも低俗なエロパロがほとんどという状況です。ますますストイックなPV系を作る人は減るでしょう。


このような状況から、今後はゲーム画面をキャプチャしたりしない、DLCを購入しない人が増えるでしょう。
今までのようにはいかなくなるのです。
ここに気づいていなければ、バンナムは二次創作での人気を=売れると勘違いしたのでしょう。
二次創作については言及しないほうがよかったのです。



以上、「9.18事件」について分析してみました。
私は、ここに至るまでの、バンナムの宣伝に関する行動が失敗だったと考えます。
総合的に、軽率で見通しが甘いということがわかります。
バンナムには、広報がいないのでしょうか?アイマス部門には広報担当がいないのでしょうか?
開発者に広報をやらせるということ自体が、軽率であるとも言えます。
彼らが出てくることは、作り手との距離が近い感じで良かったと思います。
しかし、それはあくまでファンサービスでのことあって、広報までまかせることではないのです。


声優交代のとき、あれほどに丁寧で真摯な対応だったのは、もしかすると声優さんと声優事務所のおかげだったのかもしれない、などと思い返します。


今後は、「アイマス2はここが楽しい!面白い!素晴らしい!」と、プラスになるような情報を期待しています。



おまけ。
私にとってアイマス2とは。


これは逆境なのか。それとも墓穴なのか。
逆境なら乗り越えるもの。墓穴なら飛び越えるもの。


しかし、それをするのはバンナムのほうかと思う。
さて、実際にゲームが発売されたそのとき、どうするか?
「買う」「買わない」
二者択一。
しかし、これじゃ判断しにくい。
「進む」「逃げる」
さあどうする。
今は、逃げるかな。苦労には挑んでもいいが、危険に飛び込むのはだめだ。
お金あったら、エルシャダイ買うよ。
今は、そういう気持ちです。


おまけのおまけ。


二次創作を主体に活動している人たちはこの件に関して冷めていることが多いようです。
本家がどうであろうと(そもそも本家をプレイしてない・見てない・読んでない)興味がないのでしょう。
彼らにとっては、売れるジャンルの二次創作をすることが大事なのでしょうから。
そんな人ばかりなら、ニコマス滅びても可と思うのです。


「嫌なら買わなければいい」という言葉があるようです。それは取引において売り手と買い手の立場が対等でなくなってしまうことです。
取引において、「嫌なら買うな」とか「買ってやるんだから安くしろ」などとどちらも上から物を言ってはならないのです。
そんな態度をとれば、取引に応じてもらえなくなります。


「勝手に期待して、勝手に幻滅しただけ」という言葉もあるようです。
その言葉は無意味です。
人間は勝手に生まれて、勝手に生きて、勝手に呼吸し、勝手に死ぬのです。
人間以外の動物もそう。植物も。いかがですか?
無関係な第三者からの観察とはそういうものでしょうが、現象の中身をとらえてはいません。
「勝手に」というのは言葉遊びに過ぎず、意味をなさないのです。


またおまけ。
あれから一ヶ月も経つのに今更といわれるかもしれません。しかし、私にとって今更でもないことだから書きたかった。それに、私はブログを書く時間がなかった。その他の理由でブログに書くかどうか検討していた。
ということです。